> 都議会質問 > 都議会警察・消防委員会 > 都議会警察・消防委員会で迷惑防止条例改正案に質問

都議会質問記録

2018/03/19 都議会警察・消防委員会で迷惑防止条例改正案に質問

3月19日、都議会の警察・消防委員会が開催され、警視庁、消防庁に質問をしました。まず、警視庁に対して、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(いわゆる迷惑防止条例)の一部改正について質疑を行いました。
 
都が当該条例の制定理由を警視庁は以下の通りとしています。
 
盗撮行為の規制場所を拡大するとともに、つきまとい行為等の規制を強化する。
 
1.盗撮行為の規制場所の拡大
 
 現行の盗撮規制場所(公共の場所・乗物、公衆が使用する便所・浴場・更衣室、通常衣服の全部又は一部を着けないでいる場所)から以下の場所に拡大する。
 
(1) 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
 (拡大の例)住居(トイレ、浴場、更衣室(脱衣所)、その他リビング等を含む。)
 学校・会社等のトイレ、会社等に設置されたシャワー室
 学校・会社事務室等の更衣室
 
(2) 学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物((1)に該当するものを除く。)
 (拡大の例)学校、会社の事務室、タクシー、オートロック式マンションの共用部分、カラオケボックス等の個室
 
2.つきまとい行為等の規制の強化
 
(1) 現行の規制行為(つきまとい・待ち伏せ・立ちふさがり・押し掛け、著しく粗野・乱暴な言動をすること、無言電話・拒否されたのに連続電話・ファクスを送信すること又は汚物等を送付すること。)に以下の行為を追加する。 不安を覚えさせるような方法により、みだりにうろつくこと、監視していると告げること又はEメール(SNSを含む。)を送信すること。
名誉を害する事項又は性的羞恥心を害する事項を告げること。
 
(2) 罰則の強化
 (現行)6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
 (改正後)1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 ほか
 
 
上記の条例提案に対して、以下の質疑を行いました。
 
 ○中村委員 それでは、私からも、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為などの防止に関する条例、いわゆる迷惑防止条例の改正案について質問いたします。とりわけ条文の中で、第五条の二第一項第二号で新たに追加になる、みだりにうろつくについて質問いたします。
  この迷惑防止条例の第五条の二、つきまとい行為などの禁止の項目については、これまでもさまざまな経過がありました。二〇〇二年六月に、暴走族の落書きやピンクビラ廃止の禁止などとともに提案されました。しかし、余りに対象が広範囲であることから、議会でこの部分を削除する修正をした上で可決をしました。その後、二〇〇三年九月に、正当な理由なくという文言を加え、規制される行為を限定し、濫用防止の項目を追加した条例案が再度提案され、可決をし、現在の条文になっています。
  今回は、この条文に、みだりにうろつくなどの文言を追加し、提案がされました。そこで、今回も追加になる文言について、適切な運用がされるものか質疑をしたいと思います。条例を定めるには、なぜその条例を定めなければならないのか、すなわち立法事実が必要になります。
  そこで、今回の改正についてどのような状況があるのかを、まず伺いたいと思います。
  このみだりにうろつく行為が違法として追加になることについて、SNSの普及や盗撮機器の小型化のような技術の進歩もありますが、みだりにうろつくこと自体については最近の話ではありません。相手に危害を加えるつもりなら、殺人、傷害、暴行などの刑事罰での取り締まり、また行為そのものを脅迫、威力業務妨害等で取り締まりはできないのでしょうか。なぜこの時期に条例改正の必要があるのか、具体的事例を含めて見解を伺います。

○市村生活安全部長 みだりにうろつく行為につきましては、直ちにご指摘のような犯罪行為に該当するものではないことから、罰責をもって取り締まりを行うことは困難であります。この点、行為者が人間関係のトラブルから被害者の自宅周辺をうろつく等の行為を繰り返すなど、みだりにうろつく行為については、既に規制されている待ち伏せや見張りと同様、被害者が著しく不安を覚えるものであるにもかかわらず、規制の対象外とされており、この種事案への速やかな対応が喫緊の課題となっていたものです。
  首都東京の治安課題の一つである人身安全関連事案に対する迅速かつ的確な対応を図っているところ、今回、本行為を新たに規制対象とすることで、さらなる都民生活の安全につながるものと考えております。

○中村委員 人身安全関連事案に対する迅速かつ的確な対応を図るための改正ということの答弁でした。
  もとより警視庁の皆様が、昼夜を問わず、都民の安全を守っていただいていることは敬意を表します。ただ、そのためには、犯罪を取り締まろうとする意図のある行為と、それに該当する条文が完全に一致をし、拡大解釈や濫用する余地がないようにすることが重要です。
  日本の刑事法は罪刑法定主義に基づいており、犯罪となるには、あらかじめ明確に法令で定めておかなければなりません。すなわち、どのような行為をすれば犯罪になるか明確ではなく、曖昧でわかりにくいとすると、法律を犯さないように行動しようと思っても、行動できなくなってしまいます。本来は、誰が読んでもわかることが大切なのですが、わかりにくい場合に、最終的に判断するのは裁判所です。その際、立法者の意思がどうであったのかという提案者の議会での答弁が、裁判上、大変重要になります。
  そこでまず、みだりにうろつくについて伺います。
  みだりにうろつくとは、具体的にどのような行為が違法に当たるのでしょうか。また、被害者の居所に本人がいることや、被害者がみだりにうろついていることを認識することは必要なのでしょうか。見解を伺います。

○市村生活安全部長 みだりにうろつくのみだりにとは、社会的相当性がないような態様をいい、うろつくとは、当てもなく移動することをいいますので、例えば、被害者の自宅付近をわざわざ周回して通勤したり、被害者の自宅前路上を行ったり来たりすることが本行為に該当するものと認められます。
  なお、本条例におきましては、悪意の感情等により、つきまとい行為等を反復した場合、取り締まりの対象と認められます。また、みだりにうろつく行為については、広く都民等に不安を覚えさせるものであって、社会通念上、容認されないものであれば足り、被害者が在宅しているか否かは問いませんし、被害者本人による本行為の認識も必要ありません。

○中村委員 悪意の感情等によりとか、反復した場合が対象になっているとのことですから、これはかなり厳格な運用が求められます。すなわち、ただ単に歩いていたとか散歩していたとかいうだけでは、たとえ明らかに怨恨がある客観的事実があったとしても、そのことのみで取り締まることがないようにしなければなりません。逆に、うろつかれた側から、恨みのある相手がたまたま歩いているというだけで警察に通報して、そのまま取り締まってしまうような冤罪を生んでもならないので、これは慎重な運用が必要かというふうに思っています。
  さて、先ほど述べた二〇〇三年改正の際の議論で、当時の民主党の代表質問に対して、当時の警視総監が、正当な労働運動、市民運動、取材活動などが規制対象外であることがより明確になったものと考えておりますとの答弁を得たため、当時は改正案に賛成をいたしました。ただ、このストーカー規制法に規定されている警告、中止命令、公安委員会の関与などが盛り込まれず、直罰規定のみになっているため、現場の警察官が誤って運用しないような適切な運用もその際求めました。
  その後、小金井市女子大生ストーカー刺傷事件を受けて、二〇一七年一月に、ストーカー規制法改正がされ、被害者の告訴なしで起訴できる非親告罪に変更されました。もとより、この条例による犯罪は非親告罪であり、直罰規定のままですから、これまで以上に適正な運用を求めます。
  さて、先ほどまでの議員の質問等でも、国会前のデモ等を含めて、適正な運用をするということなので、当然これは規制対象外になるということだとは思っていますが、改めて全体について質問いたします。
  二〇〇三年改正の際に、つきまといの際に正当なと限定し、濫用規定を追加していますので、今回追加になった、みだりにうろつく行為についても、当然この規定は同様に採用されます。とはいえ、一度立法化されると解釈が拡大されるおそれがあるので、ここでは、みだりにうろつくについてもきちんと確認しておきたいと思います。
  第五条の二の第三項で、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないと規定されています。しかし、政治活動、労働活動、市民運動、取材活動などにおいて、憲法が保障する言論の自由は、たとえ第三項がなくても、第一項そのものの規定自体で濫用があってはなりません。
  今回の改正で、政治活動、労働運動、市民運動、取材活動が規制されることはあってはなりませんが、見解を伺います。

○市村生活安全部長 今回追加される、みだりにうろつく行為を含む、本条例に規定するつきまとい行為等の規制については、第五条の二第三項の濫用防止規定の適正な運用のほか、同一項に規定されているとおり、正当な理由なく、専ら特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的の認定が前提条件となります。そのため、正当な理由により行われる政治活動、労働運動、市民運動、取材活動等は、その規制対象となるものではありません。
  警視庁としましては、引き続き、都民生活のさらなる安全の確保に向けて、本条例を適正に運用してまいります。

○中村委員 今のご答弁の中で、政治活動や労働運動、市民運動、取材活動がこの条例の規制対象になるものでないということを、改めて確認させていただきました。これらの憲法が保障する活動というのは本当に重要なものですから、いかなることがあろうと、これは制約をしてしまってはならないというふうに思っております。
  以上、質問を終わります。

 

ユーティリティ

都議会質問内検索

Search

過去ログ